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【現役設計士が解説!】光熱費と断熱性の関係、断熱材、断熱等級について

夢のマイホームを検討している皆さま、新築後の光熱費は気になりますよね?近年、光熱費の上昇が続いており、家計への負担は大きくなっています。

そこで今回は、光熱費と家の断熱性(UA値)の関係や断熱材、断熱性能等級について、現役設計士が解説していきます。

光熱費と家の断熱性(UA値)の関係や断熱材、断熱性能等級とは?

目次

  1. 光熱費と断熱性の関係
  2. 断熱材ってなに?どんなものがあるの?
  3. 住宅で断熱をする範囲って?
  4. 断熱性能等級とは?
  5. 光熱費を抑えるために!断熱と同じくらい大事なこと
  6. 省エネ住宅について私が感じること

光熱費と断熱性能の関係

断熱とは、読んで字の如く「熱を断つ」ことで、断熱性能とは、建物が外の暑さや寒さをどれくらい伝えにくくできるかを示す性能のことです。

断熱性能が高い住宅は、冬では外の寒さが室内に伝わりにくく暖房で温めた温度が外に逃げにくいため暖かく、夏では外の暑さが室内に伝わりにくく冷房で冷やした温度が外に逃げにくいため涼しい室内環境を保ちやすくなります。つまり断熱性能の高い家は、外気温の影響を受けにくいため、暖房や冷房の効きが良くなります。その結果光熱費を大幅に節約できるのです。

そして住宅の断熱性能を表す数値として、UA(ユーエー)値があります。

UA値とは?

https://www.potos.jp/blog/ua

外皮平均熱貫流率の略称で、家の表面から平均でどのくらいの熱が出入りするかを表す数値です。

UA値が小さいほど、熱の出入りが少ないということになり、断熱性能が高いと言えます。

本記事の後から出てくる「4.断熱性能等級とは?」にもあるのですが、日本全国の市町村区を8つの地域に分類し、その地域ごとに断熱性能等級と各等級に応じたUA値が定められています。

例えば東京23区は6地域に分類され、

0.87以下:省エネ基準適合住宅。現行法(令和6年8月時点)で定められた最低限の断熱性能を満たす住宅(断熱性能等級4)

0.60以下:高断熱住宅。一般的な住宅よりも高い断熱性能を持つ住宅(断熱性能等級5)

0.46以下:高性能住宅。現行法の省エネ基準を大幅に上回る高断熱な住宅(断熱性能等級6)

UA値(W/㎡・K)と断熱性能等級の関係はこのようになります。

断熱性能(UA値)を高めるには?

断熱性能を高めるには、以下の方法が一般的です。

断熱材の厚さや種類を変える

壁や天井、床などに性能の高い断熱材を充填したり、厚みを厚く施工したりすることで、断熱性能を高めます。

窓の種類を変える

https://www.lixil.co.jp/lineup/window/ew

窓は住宅で最も室内と外の熱が出入りする部位となるため、断熱性能の高いペアガラスやトリプルガラス、Low-Eフィルムが貼られたガラスにすることで、窓からの熱の出入りを抑えます。

そのほか

断熱性能を高めるとは少し違うアプローチですが、本記事で後から出てくる「5.光熱費を抑えるために!断熱と同じくらい大事なこと」もご一読くださいませ。

断熱材ってなに?どんなものがあるの?

断熱材とは、建物の壁、屋根または天井、床や基礎などに施工し、熱の出入りを少なくするようにする素材で、住宅の快適性だけでなく光熱費の削減にも大きく貢献します。

断熱性能が高い住宅は、暖房や冷房にかかるエネルギーと費用を抑えられ、ランニングコストを低減することができるため欠かせない材料なのです。また、適切に施工することで結露防止にも役立ち、住宅の寿命を延ばす効果も期待できます。

この断熱材には大きく次のような種類があり、それぞれに特徴があります。

①繊維系断熱材

繊維系断熱材は、ガラス繊維やロックウールなどの繊維、古紙を原料とした断熱材で、繊維と繊維の間に空気を多く含むことで、熱を伝えにくくする性質を持っています。材料によっては、調湿性や防音性にも優れています。

・グラスウール

https://www.pgm.co.jp/items/product_sun.html

繊維と繊維の間に空気層を多く含み、これが熱を伝えにくくしています。比較的安価なうえ軽量で扱いやすく、カッターなどで簡単にカットすることができ、壁や天井、床など様々な場所への施工がされています。また、繊維が音を吸収するため、騒音対策にも効果が期待できます。原料がガラスであるため、燃えにくいことも特徴です。

一方で湿気に弱く、吸湿すると断熱性能が低下する恐れがあるため、グラスウールと湿気を断つ、もしくは湿気が入っても外気に抜けるような工夫が必要になります。

・ロックウール

https://majime-house.jp/rockwool/

玄武岩などの天然岩石を高温で溶かして繊維状にした断熱材で、耐火性に優れていて、壁や天井、床など様々な場所への施工がされています。

また、繊維が音を吸収するため、防音性にも優れていて、特に高音域の防音効果が期待できます。

一方でグラスウールと同じように湿気に弱く、吸湿すると断熱性能が低下する恐れがあるため、ロックウールと湿気を断つ、もしくは湿気が入っても外気に抜けるような工夫が必要になります。

・セルロースファイバー

古紙や木材などのパルプを原料とした断熱材のため、環境に優しい素材で、調湿性や防音性にも優れています。調湿性(吸放湿性)があるため、室内の湿度を快適な状態に保ち、結露やカビの発生を抑える効果が期待できます。また、吸音効果も大いに期待ができ、これもセルロースファイバーの大きな特徴です。

こちらも壁や天井、床など様々な場所への施工がされています。

一方で、上記のグラスウールやロックウールと比べるとコストアップになりやすい材料でもあります。

②発泡プラスチック系断熱材

発泡プラスチック系断熱材は、ポリスチレンやウレタンなどのプラスチックを泡状に発泡させることで、小さな気泡がたくさんできるため、熱を伝えにくくする性質を持つ断熱材です。種類によっては高い耐水性を持っており、湿気の多い場所にも適しています。

同じ厚みの場合、繊維系断熱材よりも断熱性能とコストが高いものが多いのが特徴です。

ポリスチレン樹脂を高温で溶かし、押し出しながら発泡させ、小さな気泡をたくさん含んだ状態で板状に押し出した断熱材です。軽量で施工性が高く、カッターなどで簡単にカットできることが特徴です。高い断熱性能と耐水性に優れていて、床や基礎、壁など様々な場所へ施工がされています。

・押出法ポリスチレンフォーム

https://www.co-jsp.co.jp/product/kentiku/mirafoam

耐水性に優れていることから、玄関などの土間床の下に敷き込む断熱材として使用されることもあります。

・硬質ウレタンフォーム

https://www.achilles.jp/product/construction/insulation/q1-board

イソシアネートとポリオールを混合させて製造される板状の断熱材で、軽量で施工性が高く、カッターなどで簡単にカットできることが特徴です。高い断熱性能を持つことから、床や基礎、壁など様々な場所へ施工がされています。

・現場発泡吹付け硬質ウレタンフォーム

イソシアネートとポリオールを混合させて現場で発泡させ、吹き付ける断熱材で微細な気泡構造を持つため、熱を伝えにくく断熱性に優れています。また、発泡時に周囲の素材に強く接着し、隙間なく施工することができるため、気密性にも優れていて、基礎や壁、屋根など様々な場所へ施工がされています。

一方で湿気に弱いものもあり、吸湿すると断熱性能が低下する恐れがあるため、湿気を断つ、もしくは湿気が入っても外気に抜けるような工夫が必要になります。

・フェノールフォーム

https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/insulation/housing/lineup/neomafoam.html

https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/insulation/gene/ml.html

フェノール樹脂を発泡させて板状に成形した断熱材で、他の発泡系の断熱材と比べても断熱性能が高いのが特長です。また、熱に強く、燃えにくい素材の樹脂で作られているため、優れた耐火性があり、有毒ガスも発生しにくいので、火災時の安全性も高くなります。非常に高い断熱性能を持つことから、床や基礎、壁など様々な場所へ施工がされています。

一方で、同じ厚みの場合、他の発泡プラスチック系断熱材よりも値段が高いです。

住宅で断熱をする範囲って?

https://www.jfe-rockfiber.co.jp/construction/method.html

住宅の断熱は、壁、屋根か天井、床や基礎というように、外気に接する範囲を下から上まで途切れることなくすっぽりと施工します。

一部でも途切れてしまうと(断熱欠損)、そこが弱点になり、熱が出入りしてしまうだけでなく、結露の原因になってしまいます。この結露の場合、大抵は目に見えない構造体の中などになるため、気が付かないうちに結露で住宅が劣化していくというような恐ろしいことになってしまうのです。こういった断熱欠損以外にも、構造体内に湿気が入って抜けない場合にも結露が起きる原因となりますので、対策が必須です。

また、断熱材とは少し違いますが、窓や玄関戸も外気に接する箇所になるため、断熱性能の高いものを使うと省エネに効果的です。

窓の断熱性能が低ければ、せっかく壁や天井を断熱しても、熱の出入りが多くなり、効果が薄れてしまいます。

実は、窓からは多くの熱が出入りするので、必要以上に窓を大きくしない、そもそも増やさないということも重要になります。

(窓を減らしたり小さくしたりすれば、コストダウンにも繋がります)

断熱性能等級とは?

住宅の断熱性能等級は、1~7の7段階で評価され、数字が大きいほど断熱性能が高くなり、より高い省エネ効果が期待できます。

日本全国の市町村区を8つの地域に分類し、その地域ごとに断熱性能等級と各等級に応じたUA値が定められています。

例えば、北海道夕張市は1地域、東京23区は6地域に分類されます。そこで、どちらにもUA値0.46W/㎡・Kの家を建てる場合、1地域においては断熱性能等級4となり、6地域においては断熱性能等級6ということになります。

これは寒い地域になるほど地域区分の数字が小さくなり、それに伴ってより断熱性能の高い家でないと、より高い省エネ効果が期待しにくいということです。

2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化され、一時は最高等級だった等級4は実質、最低等級になることが予定されています。

また、2030年以降は新築住宅すべてに断熱性能等級5以上の適合が義務化される予定です。

簡単に各断熱性能等級を紹介します。

  • 等級1 昭和55年 省エネ基準未満(UA値:基準無し)

断熱材の使用が義務化されていないため、断熱性能が最も低い等級となります。

  • 等級2 昭和55年 省エネ基準と同等(UA値:0.72~2.35W/㎡・K)

壁や天井に断熱材をし、熱損失等の小さな削減のための対策がされています。

  • 等級3 平成4年 省エネ基準と同等(UA値:0.54~1.81W/㎡・K)

熱損失等の一定程度の削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱材を使用しています。

  • 等級4 平成28年 省エネ基準と同等(UA値:0.46~0.87W/㎡・K)

熱損失等の削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱材を使用して、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

  • 等級5 ZEH水準の省エネ基準と同等(UA値:0.40~0.60W/㎡・K)

熱損失等の大きな削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級4よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。この等級がZEH(ゼッチ)の基準となります。

(現役設計士としての感覚ですが、4地域まではこの等級までの断熱性能を実現することはコスト面、施工面共にそれほど難しくないように感じます)

  • 等級6 平成28年 省エネ基準より冷暖房にかかる1次エネルギー消費量を概ね30%削減(UA値:0.28~0.46W/㎡・K)

熱損失等の著しい削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級5よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

  • 等級7 平成28年 省エネ基準より冷暖房にかかる1次エネルギー消費量を概ね40%削減(UA値:0.20~0.26W/㎡・K)

熱損失等のより著しい削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級6よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

光熱費を抑えるために!断熱と同じくらい大事なこと

ここまで省エネと断熱性能についてお話をしてきましたが、他にも断熱と同じくらい大事なことをご紹介いたします。

それは、気密性、太陽の日射、風通し、です。

中には注意しないとせっかく断熱性能を高めても、その効果が低下してしまったり、かえって断熱性能が高いことがデメリットになってしまうこともあります。

ここまで長くなってしまいましたが、夢のマイホームをより良いものにするため、どうかもう少しだけお付き合いくださいませ。

①気密性とは?

https://www.njkk.co.jp/product/tabid75.html?pdid=k_sh_10

住宅の気密とは、隙間を減らして外気の出入りを防ぐことです。隙間が多い住宅は、冬は冷たい外気が入り込み、夏は涼しい空気が外に逃げてしまうため、冷暖房のエネルギーを多く消費して、光熱費が高くなります。

気密と断熱は、密接な関係にあります。断熱性能が高い住宅であっても、気密性能が低ければ、せっかくの断熱性能が活かせません。例えば、冬にダウンジャケットを着ていても、そのチャックを閉めなければ、閉めた時と比べると暖かさを感じにくいかと思います。

また、気密性を高めることで結露防止にもなり、住宅の寿命を延ばす役割もあります。

このように気密性は、快適な住環境を実現し光熱費を節約するために非常に大事なことなのです。

気密性を表す数値として、C値(シー)があります。

C値とは?

C値とは、住宅の気密性を表す数値で、「相当隙間面積」とも呼ばれます。簡単に言うと、住宅全体にどれくらいの隙間があるかを示すもので、C値が小さいほど隙間が少なく気密性が高いことを意味します。

C値の目安

実はC値の基準は定められておらず、住宅メーカー毎の考え方や基準によります。木造住宅のC値は、概ね1.0㎠/㎡以下で高気密住宅と言われておりますが、現役設計士で現場の施工管理経験もある身としては、C値0.5㎠/㎡以下を目標の目安としたいところです。

C値の具体例

C値1.0㎠/㎡の場合、延面積100㎡の住宅であれば、住宅全体で100㎠(約0.7枚のハガキ)分の隙間があることになります。

C値0.5㎠/㎡の場合、延面積100㎡の住宅であれば、住宅全体で50㎠(約0.35枚のハガキ)分の隙間があることになります。

C値の測定の仕方と行うタイミング

https://www.njkk.co.jp/blog/?itemid=50&dispmid=764

C値測定は、専門の測定機器を用いて行われ、一般的にブロアードアテストと呼ばれます。住宅の全ての窓やドアを閉め、換気扇などの開口部をふさぎ、測定機器をドアや窓に取り付けます。

測定機器を使って、住宅内から空気を外部へ排出し、このとき住宅内の気圧が低下し、隙間から入り込んできた空気の量を測定し、C値を算出します。

測定のタイミングは工事完了後に行う場合もありますが、もしこの測定で目標となる数値が出なかった場合、工事がすべて終わっているため、隙間をふさぐことが非常に難しい箇所が多くあります。

そのため、断熱材と気密部材が施工されたタイミングで測定するといいでしょう。もしこの測定で目標となる数値が出なかった場合でも、隙間を見つけてそこをふさぐことが比較的簡単だからです。基本的には完成後に見えなくなる断熱材や気密部材の施工前に測定することは、お勧めできません。

②太陽日射の遮り方(夏)と取り入れ方(冬)

夏は日射しが強くて室温が下がりにくい、冬は日射しが弱くて室温が上がりにくい、これは季節ごとに誰もが感じることかと思います。だからこそエアコンなどの冷暖房機器で温度調整をして快適に過ごそうとします。

もし日差しをうまくコントロールすることで、夏は涼しく冬は暖かくできたら、快適に過ごせるだけでなく、省エネにもつながっていくのです。

そのためには夏は日差しは遮り、冬は日差しを取り入れたくなります。

日差しを遮るために有効な方法は、

  • 窓の位置と大きさを工夫する。特に東、西、北側の窓は不必要に大きくしない。
  • 軒や庇を活用する。南側が照らされる時間帯は、太陽高度が高めのため特に有効。
  • 高さのある樹木を植えると、壁に木陰ができる。落葉樹だと冬の日差しも取り入れやすくなるため、特に◎
  • ハニカムスクリーンや遮光カーテン、ブラインドを使用する。

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https://www.lixil.co.jp/lineup/window/external_blind

などが挙げられます。

日差しを取り込むために有効な方法は、

  • 敷地の建物の配置を決める際に、隣地や周辺の状況を踏まえて、できる限り南側が広く空くように計画する。
  • 南側になるべくLDKや寝室などの主要な部屋を計画する。
  • 南側になるべく大きな窓を設ける。

などが挙げられます。

南側に大きな窓を設けた場合、冬はいいけど夏は暑い日差しがたくさん入ってしまう、と思われがちですが、ここで軒や庇があると夏の日差しを遮ってくれて、冬は太陽高度が夏よりも低いため、日差しが軒や庇の下を潜って遮ることなく、取り込むことができます。

このように太陽の日射は上手にコントロールすることができるのです。

逆に日差しを上手にコントロールしないと、夏は日差しを遮らないと窓からたくさんの光と熱が入ってきて、電気ヒーターのような暖房を点けながら冷房をするという状態になってしまいます。そして高断熱な家は良くも悪くも熱が逃げにくいため、窓から入った日差しの熱でかえって暑くなりやすくなってしまうのです。

また、冬の日差しは無料で手に入る暖かいエネルギーになりますので、活用できればできるほど省エネ効果を期待でき、昼間に取り入れた熱は室内に蓄えられるので、日が落ちてからも省エネ効果が期待できます。

③風通しの計画

住宅における風通しは、快適な居住環境を実現するために重要な要素で、特に夏場の暑さ対策においては、風通しの良い設計が重要となります。地域特有の風向き「卓越風」を活かして風通しを計画すると良いでしょう。

卓越風とは、ある地域で年間を通して最も頻繁に吹く風のことを指します。地域、季節、時間帯によってこの風向きは異なります。卓越風を知ることで、住宅の設計において風を取り込みやすい向きや窓の配置や開き方などを検討することができます。

例えば、冷房を点けるかどうか迷うような初夏の時期は、風の通りが良くなることで涼しさを感じられるようになるでしょう。

省エネ住宅について私が感じること

昨今、テレビCMやニュースなどでUA値や断熱性能等級について触れることも多くなってきたように感じます。これは省エネ住宅の普及を促進し、延いては政策本来の目的である温室効果ガスの削減に繋がることです。

しかし、断熱性能等級ばかりが取り上げられ、同じく大事な気密性や日射との付き合い方に目が行きにくくなっているようにも感じます。

UA値や断熱性能等級という数字で表されるものはある種分かりやすく、そのため各企業がアピールしやすいものかと思います。

さらにこれは住宅業界に身を置くひとりの感想ですが、断熱以外の気密や日射、通風についてはあまり重要視していない企業が多いようにも感じています。

これらの性能を高めるということはコストアップになりやすいため、すべてを高水準で実現することは難しさもあるかと思いますが、省エネ住宅をつくるのであればこれらも断熱性と同じくらい重要視する必要があるはずです。

住宅新築をお考えでここまで読んでくださり、もし「断熱とおなじくらい大事なことが他にもある」と感じた方は、住宅会社探しの際にぜひ「気密性はどう?」「日射については夏と冬でどう考えていますか?」「風通しはどう計画していますか?」と聞いてみてください。

そこできちんとした数字や計画が返ってくる会社を建築依頼する候補にしてみるものひとつではないでしょうか。

どうか皆さまの家づくりがより良いものになりますように。

最後まで読んでくださってありがとうございました。