Home » 省エネ住宅 » 高性能住宅 » 住宅の断熱性能等級とは

住宅の断熱性能等級とは

近年、地球温暖化対策やエネルギーコスト上昇への関心が高まる中、住宅の断熱性能はますます重要になっています。そこで今回は、現役設計士が住宅の断熱性能を表す指標である「断熱性能等級」について分かりやすく解説し、快適で省エネな住まいを実現するための情報を提供します。

目次

住宅の断熱と断熱性能等級とは?

  1. 各断熱性能等級の違い
  2. 断熱性能等級を上げる方法
  3. 断熱性能等級に関するQ&A
  4. まとめ

1. 住宅の断熱と断熱性能等級とは?

住宅の断熱性能は、冷暖房効率に大きく影響します。断熱性能が高い住宅は、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるため、冷暖房にかかるエネルギーが少なく済みます。

住宅の断熱性能等級は、1~7の7段階で評価され、数字が大きいほど断熱性能が高くなり、より高い省エネ効果が期待できます。

https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/dannetsutokyu

 

https://www.ykkap.co.jp/consumer_business/satellite/law/area-classification

2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化され、一時は最高等級だった等級4は実質、最低等級になることが予定されています。

また、2030年以降は新築住宅すべてに断熱性能等級5以上の適合が義務化される予定です。

2.各断熱性能等級の違い

  • 等級1 昭和55年 省エネ基準未満

断熱材の使用が義務化されていないため、断熱性能が最も低い等級となります。

冬は寒く、夏は暑くなりやすいなど、室温が大きく変動しやすく、光熱費が高くなりやすいのが特徴です。

 

  • 等級2 昭和55年 省エネ基準と同等

壁や天井に断熱材をし、熱損失等の小さな削減のための対策がされています。

等級1ほどではなくとも冬は寒く、夏は暑くなりやすいなど、室温が大きく変動しやすく、光熱費が高くなりやすいのが特徴です。

 

  • 等級3 平成4年 省エネ基準と同等

熱損失等の一定程度の削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱材を使用しています。

等級2以下より冬は暖かく、夏は涼しく過ごせますが、等級4以上よりも光熱費が高くなりやすいのが特徴です。

 

  • 等級4 平成28年 省エネ基準と同等

熱損失等の削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱材を使用して、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

等級3以下より光熱費を抑えやすく、省エネ効果が実感しやすいのが特徴です。

 

2025年度以降、全ての新築住宅の最低基準の等級となる予定です。

 

  • 等級5 ZEH水準の省エネ基準と同等

熱損失等の大きな削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級4よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。この等級がZEH(ゼッチ)の基準となります。

断熱性能が高く、冬は寒くなりにくく、夏は暑くなりにくくなり、省エネ効果が期待できます。

 

2030年度以降、全ての新築住宅の最低基準の等級となる予定です。

(現役設計士としての感覚ですが、地域によってはこの等級までの断熱性能を実現することは技術面、コスト面共にそれほど難しくないように感じます)

 

  • 等級6 平成28年 省エネ基準より冷暖房にかかる1次エネルギー消費量を概ね30%削減

熱損失等の著しい削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級5よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

 

等級5よりも断熱性能が高く、冬は寒くなりにくく、夏は暑くなりにくくなり、より大きな省エネ効果が期待できます。

 

  • 等級7 平成28年 省エネ基準より冷暖房にかかる1次エネルギー消費量を概ね40%削減

熱損失等のより著しい削減のための対策として、壁、天井、床などに断熱性能等級6よりもさらに性能の高い断熱材を使用し、開口部(窓やドア)の断熱性能も向上させる必要があります。

 

等級6よりも更に断熱性能が高く、冬は寒くなりにくく、夏は暑くなりにくくなり、より大きな省エネ効果が期待できます。

 

3.断熱性能等級を上げる方法

  • ・壁、天井、床などの主要な部位ごとに性能の高い断熱材を適切な厚さで採用することが重要です。

断熱材には、グラスウールなどの繊維系断熱材、ポリスチレンフォームなどの発泡プラスチック系断熱材があります。それぞれの断熱材に良さがあり、その良さを活かす施工も重要になります。

 

  • ・断熱性の高い窓や玄関ドアを採用し、不必要に窓を大きくしないことも重要になります。

窓は住宅の中で最も熱の出入りがある部位となり、トリプルガラスといった高性能な窓でも、壁などの部位に採用する断熱材よりも熱を通しやすい傾向があります。

4.断熱性能等級に関するQ&A

Q1:断熱性能等級の高い住宅は、建築費用が高くなる?

A1:高い断熱性能等級を求めると、断熱材を厚くしたり断熱性の高い窓を採用したりすることになり、材料費や施工費が高くなる傾向があります。ただし、光熱費の節約や住宅の資産価値向上などのメリットを考えると、長期的な視点でみるとお得な場合もあります。また、補助金を受けられる場合があります。

 

Q2:断熱性能等級を上げるリフォームは可能?

A2:リフォーム工事でも断熱性能等級を上げることが可能です。ただし、既存の住宅に断熱材を追加したり、気密性能を向上させたりするなどの工事が必要となるため、新築よりも費用の割合が高くなる傾向があります。リフォーム工事も補助金を受けられる場合があります。比較的簡単にできる断熱リフォーム工事として、既存の窓の内側に内窓を設置する方法があります。

5.まとめ

住宅の断熱性能等級は、快適で省エネな暮らしを実現するために重要な指標です。断熱性能等級の高い住宅は、光熱費を節約し、環境負荷を低減することができます。

また、断熱性能を上げるだけでなく、気密性を高めることや夏や冬の日差しとの上手な付き合い方も重要になってきます。せっかく断熱性能を上げても隙間が多い住宅になってしまったり、夏の暑い日差しが窓から入ってきてしまったりすると省エネ性が低くなってしまいます。

新築やリフォームを検討している場合は、間取りやデザインのほかに、これらについても検討することをおすすめします。