快適な住まいを実現する鍵!断熱性能等級を高めるメリットとデメリットを費用と共に徹底解説
近年、地球温暖化対策やエネルギーコスト上昇への関心が高まる中、住宅の断熱性能はますます重要になっています。断熱性能の高い住宅は、光熱費を節約できるだけでなく、快適な室内環境を実現し、健康にも良い影響を与えます。本記事では、断熱性能等級とは何か、そのメリット・デメリットについて現役設計士が解説します。
目次
- 断熱とは?
- 断熱性能等級とは?
- 断熱性能等級を高めるメリットは?
- 断熱性能等級を高めるデメリットは?
- まとめ
断熱とは?
断熱とは読んで字の如く「熱を断つ」ことで、断熱性能とは建物が外の暑さや寒さをどれくらい伝えにくくできるかを示す性能のことです。
住宅の断熱性能は冷暖房効率に大きく影響し、断熱性能が高い住宅は外気温の影響を受けにくく、冬は暖かく夏は涼しく過ごせるため、冷暖房にかかるエネルギーが少なく済み、その結果光熱費を大幅に節約できるのです。
そして住宅の断熱性能を表す数値として、UA(ユーエー)値があります。
UA値とは?
外皮平均熱貫流率の略称で、家の表面から平均でどのくらいの熱が出入りするかを表す数値です。
UA値が小さいほど、熱の出入りが少ないということになり、断熱性能が高いと言えます。
本記事の次に出てくる「2.断熱性能等級とは?」にもあるのですが、日本全国の市町村区を8つの地域に分類し、その地域ごとに断熱性能等級と各等級に応じたUA値が定められています。
例えば東京23区は6地域に分類され、
0.87以下:省エネ基準適合住宅。現行法(令和6年8月時点)で定められた最低限の断熱性能を満たす住宅(断熱性能等級4)
0.60以下:高断熱住宅。一般的な住宅よりも高い断熱性能を持つ住宅(断熱性能等級5)
0.46以下:高性能住宅。現行法の省エネ基準を大幅に上回る高断熱な住宅(断熱性能等級6)
UA値(W/㎡・K)と断熱性能等級の関係はこのようになります。
断熱性能等級とは?
住宅の断熱性能等級は、断熱性能1~7の7段階で評価され、数字が大きいほど断熱性能が高くなり、より高い省エネ効果が期待できます。
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/dannetsutokyu
2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化され、一時は最高等級だった等級4は実質、最低等級になることが予定されています。
また、2030年以降は新築住宅すべてに断熱性能等級5以上の適合が義務化される予定です。
上の表にある地域区分とは、日本全国の各市町村区が大きく8つの地域に分類されているもので、その地域ごとに断熱性能等級と各等級に応じたUA値が定められています。
https://www.ykkap.co.jp/consumer_business/satellite/law/area-classification
例えば、北海道夕張市は1地域、東京23区は6地域に分類されます。
そこで、どちらにもUA値0.46W/㎡・Kの家を建てる場合、1地域においては断熱性能等級4となり、6地域においては断熱性能等級6ということになります。
これは寒い地域になるほど地域区分の数字が小さくなり、それに伴ってより断熱性能の高い家(UA値の小さい家)でないと、より高い省エネ効果が期待しにくいということです。
断熱性能等級を高めるメリットは?
断熱性能等級を高めると以下のようなメリットがあります。
光熱費の大幅削減
断熱性能の高い住宅は、外気温の影響を受けにくくなり夏は涼しく冬は暖かいので、冷暖房の使用量を大幅に減らして光熱費を節約することができます。
私は個人的に「性能を高めるためのコストアップは、将来にかかる光熱費の先払い」と考えています。
断熱性能の高い高性能住宅を建てることは、標準的な性能の住宅を建てるよりも初期の建築コストが上がることではありますが、お住まいになってからの光熱費を抑えてくれるため、先に光熱費(性能アップのためのコスト)を払っておけば後からかかる光熱費が少なく済む、という考え方です。
残念ながらこの先、光熱費の単価が下がることは考えにくいでしょう。そうなると将来的に光熱費単価が上がっていった場合、断熱性能の高い住宅とそうでない住宅とでは支払う光熱費に更なる開きが生じてきます。
またこの3つ後に書くように、住宅の資産価値も上がる可能性もあるため、ご予算が許すのであれば断熱性能等級の高い(現役設計士としては等級6以上を目指したいところです)住宅をご検討いただきたいです。
快適な室内環境の実現
断熱性能の高い住宅は、室内の温度変化が少なく、一年中快適な室内環境を維持しやすくなります。
夏は暑さを遮断し冬は暖気を逃がさないので、冷暖房の効きが良くなり快適に過ごせます。
健康リスクの低減
断熱性能の高い住宅は、室内温度差が小さくなるため、ヒートショックのリスクを低減することができます。ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などの発作を起こすことを指します。特に高齢者はヒートショックのリスクが高いため、断熱性能の高い住宅は健康維持にも効果的です。
またヒートショック対策のほかにも、断熱性能の高い住宅に転居した場合の例として喘息やアトピーなどのさまざまな健康改善効果が期待できます。
ほかには、寒い時期も室内の温度が一定に保たれやすくなるため、単純に風邪をひきにくくなるでしょう。そうすると、医療機関に掛かることや薬を買うこと、延いては仕事を休む機会(欠勤による収入ダウン)が減るため、その分の生活コストも抑えられることになります。
このように、断熱性能等級の高い家に住むということは、健康リスクの低減や健康改善効果が期待でき、よって体調を崩した場合の出費も抑えることができるのです。
住宅資産価値の向上
断熱性能の高い住宅は省エネ性能や快適性が高いことから、住宅資産価値が向上する可能性があります。
そのため、例えば将来住宅を売却する際に、より断熱性能が高い住宅は査定価格が高くなる可能性があります。
断熱性能等級を高めるデメリットは?
断熱性能等級を高めようとすると、以下のようなデメリットもあります。
施工についての難易度
断熱性能の高い住宅を建てるためには、高度な施工技術や幅広い知識が必要となり、そのため、施工できる業者数が限られていたり、工期が長くなったりする可能性があります。
住宅会社選びが重要となり、住宅検討から住宅会社の決定までの期間にゆとりを持つことが必要です。
住宅会社探しの際に、断熱性能等級はもちろんですが、気密性の自社基準、夏と冬の両方の太陽光との付き合い方などをぜひ聞いてみてください。
そこできちんとした数字や計画が返ってくる会社を建築依頼する候補にしてみるものひとつではないでしょうか。
初期費用(建築コスト)の増加
増額費用:約150~250万円(税抜)UP (木造住宅 総2階建て 延面積:100㎡(約30.2坪)の場合)
現役で住宅業界に身を置く私の肌感として、2024年現在に多く建てられているであろう標準的な住宅(断熱性能等級5)と比べて、より断熱性能の高い住宅(断熱性能等級6)を建築する場合は約10~20%程度の建築コストがアップし、断熱性能等級7を目指す場合は更に高くなります。
これは、断熱性能の高い住宅は、断熱材や高性能な窓などの建築材料が高価だったり、施工の工程が増えるたりするため、初期費用(建築コスト)が高くなるのです。
しかし先程書いてきたように、光熱費の削減や健康リスクの低減(医療費の削減)、住宅の資産価値向上などのメリットを考えると、長期的な視点でみるとお得な場合もあります。
また、国や都道府県などからの補助金を受けられる場合もあるため、総合的にデメリット以上にメリットがあると私は考えております。
まとめ
断熱性能等級は、住宅の快適性や省エネ性能(光熱費の削減)、健康などに大きな影響を与える重要な指標です。
断熱性能等級を高めることで、光熱費を節約したり、快適な室内環境を実現したり、健康リスクを低減したりすることができます。一方で、初期費用増加や施工方法の制限などのデメリットもありますが、それを上回るメリットが得られるものと私は考えております。
より良い住まいを実現するために、ライフスタイルや予算などを考慮しつつ、断熱性能等級の高い住宅の建築をぜひご検討いただきたいです。