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【プロ目線】2025年新築住宅補助金、GX志向型住宅で理想の住まい&失敗しないために!【補助金160万円】

新築住宅で補助金160万円!?2025年はGX志向型住宅でお得に!ZEH水準と長期優良、GX志向型を費用比較!プロが補助金の最新情報、意外な落とし穴、住宅会社選びのポイントを徹底解説して理想の住まいづくりから暮らしの実現をサポートします!

2025年の新築住宅における補助金額と性能の概要

2025年の新築補助金制度「子育てグリーン住宅支援事業」注文住宅の新築についての補助額は次の表のとおりとなります。

補助対象住宅1戸あたりの補助額古屋の除却を伴う場合の
補助加算額
ZEH水準住宅40万円20万円
長期優良住宅80万円20万円
GX志向型住宅160万円なし

対象要件の詳細 https://kosodate-green.mlit.go.jp/new-house/

この補助金には、対象となる世帯や住宅の性能、床面積をはじめとして様々な条件があるため上のURLで詳細を確認していただきたいのですが、ここでは戸建の住宅の性能、断熱性能等級と一次エネルギー消費量削減率を記します。

新築戸建て 寒冷地や多雪等域等を除く一般地

補助対象住宅断熱性能等級再生可能エネルギーを除く、一次エネルギー消費量削減率
再生可能エネルギーを含む、一次エネルギー消費量削減率
ZEH水準住宅等級5以上20%以上
長期優良住宅等級5以上20%以上
GX志向型住宅等級6以上35%以上100%以上

住宅の断熱性能等級は、1~7の7段階で評価され、数字が大きいほど断熱性能が高くなり、より高い省エネ効果が期待できます。

日本全国の市町村区を8つの地域に分類し、その地域ごとに断熱性能等級と各等級に応じたUA値が定められています。

住宅の断熱性能等級とは

このように住宅の省エネ性についてはZEH水準住宅と長期優良住宅は同条件になっていて、その上の基準にあるのが、GX志向型住宅になっています。

各補助金対象仕様の概算建築費用の比較

補助対象住宅と金額がわかったところで、各補助金対象住宅の概算建築費用をみていきましょう。

比較をするうえで、使用する断熱材や一部の省エネに関する機器以外は次のようなもので考えます。

・想定建築地域:地域区分6(東京都の過半の市町村区が地域区分6)

・木造総2階建て、延面積109.43㎡(33.10坪)

・オール電化住宅(エコキュート JIS効率3.5想定)

・屋根材:ガルバリウム鋼板

・外壁材:防火サイディング16mm金具止め(メーカー普及グレード想定)

・キッチン、システムバス、洗面化粧台 各1台ずつ(メーカー中間グレード想定)

・トイレは手洗い付き便器を2台(メーカー普及グレード想定)

・内装材:床と建具造作材をメーカー普及グレード、壁と天井はビニールクロス普及グレード

・LDKエアコン:性能い区分 他:設置しない

・居室、非居室共にLED照明(メーカー普及グレード)

・カーテン等(メーカー普及グレード)

・太陽光発電別途費用

・確認申請、地盤調査、敷地調査費含む

・その他の申請費、地盤改良、上下水引き込み、家具、家電、外構工事、その他別途費用

 概算価格(税抜)

・ZEH水準住宅の概算建築費用 2,400~2,550万円

・長期優良住宅の概算建築費用 2,500~2,650万円

・GX志向型住宅の概算建築費用 2,600~2,750万円(+太陽光発電10kW程度で200万円前後)

※地域の人件費や狭小地などの立地条件、使用する材料などの様々な条件によりこの概算費用の範囲から外れる場合もあると思われますので、あくまでも概算費用として捉えてください。

ZEH水準と長期優良は断熱やエネルギー消費量削減率の条件は同じなのですが、長期優良住宅は省エネ性のほかに耐震性や建物の劣化対策などの条件があるため、ZEH水準よりも費用が高額になってきます。

GX志向型住宅には再エネ設備として太陽光発電がほぼ必須となり、その費用も上乗せになってきますが、買い切りではないリースのサービスもあるので、初期費用が抑えられる(もしくは掛からない)ようにもできるケースもあります。

意外な落とし穴!?これをしないとせっかくの高性能住宅が…

補助金対象になるGX志向型やZEH水準、長期優良住宅はその省エネ性能から、住んでからの快適性や光熱費削減の期待があります。

しかしUA値という断熱性能だけを求め、それ以外の大事なことが考えられていないと、断熱性能を高めれば高めるほど…なんてことになってしまうケースも十分考えられるのです。

これから挙げることはGX志向型だけでなく、ZEH水準や長期優良にも言えることですので、ぜひ目を通していただければと思います。

 そもそもUA値とは?

UA値とは、平均外皮熱貫流率のことです。つまり建物の壁や天井(または屋根)、窓、床などの外気に接する面すべての断熱性の平均値で、この数値が小さいほど外気温の影響を受けにくいということになります。

ここで注目したいのは、平均という意味合いです。

平均ということは、その数値を紐解くと断熱性が高い部位もあれば低い部位もあります。

極端な例えを出してみます。

壁の断熱は内側+外側のダブル断熱で、厚みも合計20㎝あります!というものだとします。これはとても断熱性能が高く、省エネ効果が期待できます。

https://www.pgm.co.jp/200mm/case01.html

一方で窓は内外アルミ枠の一枚ガラスだとします。この仕様の窓は極めて外気温の影響を受けやすく、断熱性に乏しい窓と言わざるを得ません。

このようなダブル断熱という高断熱仕様の壁と、断熱性に乏しい窓の組み合わせだとしても、全体の平均値を求めるとほどほどなUA値に落ち着く場合が多いです。

これはおそらく実物件では無いような極端な例ですが、全体のバランスが大切ということをお伝えしたいのです。

このUA値、後から出てくる日射の影響を受ける数値のηAc値とηAh値をもって、どのくらい省エネ効果があるのか、というのが大切です。

 住宅部位ごとの断熱性能とバランス

同じ室内温度でも、バランスのあまりとれていない断熱性能の部位があると、バランスのいい場合と比べて、室内温度と体感温度に差が出てきます。

更に、足元と頭でおよそ3℃を超える温度差になると不快感を覚える人が多くなる傾向にあります。また温度差が大きいと不快感だけではなく、自律神経の乱れにもつながる恐れがあるということも言われているため、そうならないようなバランスのいい部位ごとの断熱性能にしなければ、場合によっては快適な室内環境とは言えなくなってくるのではないでしょうか。

この部位ごとの断熱性能のバランスを取る一つの例として、国土交通省の出している「木造戸建て住宅の仕様基準ガイドブック」を見ると、壁と天井(または屋根)の断熱性能の比が壁1:天井(または屋根)2程度にすることが望ましいということが読み取れます。(地域区分によって比率に違いがあります)

国土交通省HP:資料ライブラリーより https://www.mlit.go.jp/common/001748733.pdf

このようなことをきちんと積み重ねていったUA値こそが、その数値で成せる快適性を実現することになっていくのです。

UA値の優れた住宅を設計する際には、住宅会社ごとに概ねこの比率だったり、或いは近い比率だったりに落ち着いているかとは思いますが、それが偶然そうなったのではなく、きちんと理解・言語化されてそうなっていることが重要だと思います。

 日射との付き合い方の重要性と数値化

もうひとつUA値にまつわるお話をしたいと思います。

断熱性能についてお調べの方は、UA値が優れた建物は夏は涼しく冬は暖かい、という認識でいらっしゃる方がほとんどかと思います。これは間違いではありません。

外気温を室内に伝えにくく、室内の温度も外へ逃がしにくくできるため、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現しやすくなるのです。

一方で、以前お話しした【夏は涼しく冬は暖かい!】現役設計士が語る日差しを味方につける賢い設計術でお話ししたことのひとつに、夏の日射を遮ることの重要性がありました。

このような庇などで夏の日射を遮る工夫をしていないと、それは容赦なく窓から室内へ入り込みます。例え樹脂枠のトリプルガラスという高性能な窓だとしても、庇やシェード、ハニカムスクリーンなどの日射遮蔽部材で遮らなければ、容赦なく室内へ入り込みます。

そして、UA値が優れている建物は室内の温度を外へ逃がしにくくなります。つまり、太陽の暑い日差しで熱せられた室温が下がりにくいのです。

そうすると不快感があるので、冷房を強く設定するかと思いますが、当然電気も多く使います。

こうなってしまうと「せっかく断熱性能のいい家を建てたのに、夏も涼しく過ごせて高熱費も抑えられるんじゃなかったの…?」という結果を招くことも十分に考えられます。

そんな日射の取得を表す数値として、ηAc値とηAh値があります。

ηAc値:冷房期の平均日射取得率で、低いほど冷房が効きやすい

ηAh値:暖房期の平均日射取得率で、高いほど暖房が効きやすい

GX志向型住宅に限らずZEH水準住宅も、UA値のほかにこの値が同じくらい重要で、これらがおろそかになると前述のように、せっかくの高断熱住宅に不満を感じてしまう可能性があります。

 ηAc値とηAh値が0.1違うと電気代はどのくらい変わる?

以下の条件で試算してみます。

木造総2階建て、延面積109.43㎡(33.10坪)

UA値:0.46W/㎡・K(東京都の過半の市町村が地域区分6・断熱性能等級6)

オール電化住宅(エコキュート※JIS効率3.5、LDKをルームエアコン、など)

電気代算出には設計2次エネルギー消費量の消費電力量を参照

電気量料金は東京電力スマートライフの各プランを参考に1kWhあたり34円で計算

ηAc値が0.1上がると 26kWh × 34円 = 884円/年UP

ηAh値が0.1下がると 30kWh × 34円 = 1,020円/年UP

家族構成、在宅の時間帯などの様々な生活形態によりますが、上のような条件では概算でこのような試算になります。

これはそれぞれ0.1の差がある場合に年間の電気代に換算したものになりますので、この差が0.2、0.3…となると、2倍、3倍、となっていき、更に住む年数を掛けることで長期的な電気料金の差になっていきます。

そしておそらく電気料金単価は今後も上がり続けるであろうと考えると、この試算より差が大きくなることも十分考えられます。

また、あくまでもこれは光熱費の差であり、暖冷房の効きにくさについての不快感は表せていません。

このため、この長期的に見た場合に発生するであろう電気料金の差(30年で少なくとも十数万円以上として)を住宅への初期投資として、庇やシェード、ハニカムスクリーンなどのような日射遮蔽部材を設置すれば、投資回収+快適度UPを十分見込めると考えます。

ηAc値、ηAh値はそれぞれどのくらいを目安にすればいいの?

ηAc値には地域区分ごとに基準があります。

地域区分1~45678
基準値設定なし3.02.82.76.7

(このようになっていますが、個人的にはかなり甘い基準に感じます…)

一方でηAh値には基準が定められていません。

これらの目標値ですが、

ηAc値:1.2以下

ηAh値:2.0以上

にできると暖冷房の負担がグッと減ると考えており、これを目指して設計をしたいです。(地域や敷地と周辺状況、建物形状、間取りのご要望などによって難しい場合も多々ありますが…)

このためには日差しと上手に付き合う設計や、方角に合わせた窓サイズもきちんと考慮・検討することが不可欠になります。

参考:【夏は涼しく冬は暖かい!】現役設計士が語る日差しを味方につける賢い設計術

住宅会社選びのポイント

ここまで読んでくださった方は、断熱性能を表すUA値のほかにも大事なことがあり、それがおろそかになるとせっかくの高断熱住宅が高性能ではなくなってしまう恐れがあると感じてくださったのではないかと思います。

今回の補助金を利用する際に確認したいことをまとめますので、これが住宅会社選びのポイントとして参考になれば幸いです。

①子育てグリーン住宅支援事業の補助対象住宅に対応しているか

②ηAc値を下げる工夫とηAh値を上げる工夫をどのようにしているか、その目標数値

③住宅の気密性を確保するためにどのような工夫をしているか、その目標数値

④窓からの風通しの工夫をどのようにしているか

これらのことを聞いてみるといいかと思います。

これらの質問に対して曖昧な表現にしてはぐらかすことなく、きちんとしたやり方や数値などを答えられる住宅会社を検討する候補に加えてみると、家づくりがよりよいものになるかもしれません。

これはあくまで私見ですがここで判断を急いではいけないと思うのが、

営業マンがこれを細かく答えられない = 不安だなぁ…

となることです。ここで設計職や技術職に社内の基準や施工を確認して、後日だとしてもきちんと回答できる会社は、裏方の設計職や技術職の方がしっかりしていると思えます。(曖昧な表現でやり過ごそうとするよりもよほど誠実に思えます)

ただ、確認したうえでもきちんとした回答がなかったり、曖昧な表現で返ってくるようであれば、建築の候補としては考え直してみることもときには必要かもしれません。

私の経験則ではありますが、省エネや快適な暮らしはUA値だけでは実現しないことを理解している会社は、これらの質問をした際にすべてきちんと答えられると思います。

なぜなら、これらのことは省エネや快適な暮らしの肝になることだからです。

この記事では触れていない気密についても同じく重要なことになるため、住宅会社選びのポイントとして追加しています。気密の重要性について、個人的に考える目標数値も含めて下のリンクも参考になれば幸いです。

【気密性の重要性!】断熱と同じくらい重要な気密のメリット・デメリットを現役設計士が解説

GX志向型住宅について私が感じていること

補助金を利用するための高断熱住宅?快適な暮らしのための高性能住宅?

昨今、住宅会社だけでなくお客様も建物の断熱性への関心が高まっていると言われており、私自身も日々の業務で実感しております。

これまで紹介したように今年2025年からは、新たにGX志向型住宅(断熱性能等級6以上)に160万円の補助金が予定されているため、一層の関心の高まりを感じます。

少し前までは断熱性能等級6以上の建物商品を持っている、施工ができる住宅会社は少ない印象でしたが、この補助金に対応するため様々な会社が建物商品を掲げて「わが社でもGX志向型住宅の補助金を受けられます!」とアピールすることだと思います。

一方でこの補助金は、UA値や一次エネルギー消費量の削減率の基準は定められていますが、日射との付き合い方に直結する数値や気密性能を示す数値は定めていません。

つまりこれらをきちんと理解しないままに、補助金を受けるため、その受注を逃がしたくないためにUA値のみを追い求めるという住宅会社が増えるのではないかと少々気になっているところです。

一次エネルギー消費量を削減できているということは、光熱費が抑えやすくなるということになっていくため、「日射との付き合い方を深く考えなくとも、うまいこといくのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

たしかに、一次エネルギー消費量の削減=光熱費が抑えやすくなる、ということですが、この削減はグレードの高いエアコンや設備を多く導入することで解決できます。

しかし、エアコンや給湯器はおよそ10~15年を目安に買い替え時期がきて、その時に同じように高価な設備を入れる必要がある、なんてことになります。

それにこれでは、そもそも夏の日射熱が入ってくる、それにによるこもった暑さでの不快感の根本解決にはならないと考えます。

このため私は、UA値はもちろんですが、日射の遮蔽や取得がきちんと考えられ、それが数値化されたものでなければ高性能住宅とは言えないと考えています。

補助金を利用するために高断熱住宅にするのか。

快適な暮らしを実現させるために高断熱だけでない高性能住宅を建て、そのために補助金を利用するのか。

どうかこの補助金を利用する方が長く快適に過ごせる住宅を手にできますよう、この記事がお役に立てれば幸いです。